【大会ルールについて】

  

空手には、その会派の考え方の相違で、組手大会には様々なルールがあります。

そのルールは大きく分けて3種類あります。

空手における大会ルールはとても重要です。同じルーツを持つ空手が、大会ルールの違いで、全く別の競技になっているのが現状で、大会はもちろんのこと稽古さえ一緒に行うことができません。

  

どの会派でも大会ルールの策定においては、「競技化に際しての安全性の考慮」、そして「空手本来の技術を発揮できるものを試行錯誤しています。

それでも、長所と短所はどのルールにもあります。そのような観点から、大会ルールを考えてみたいと思います。

  

1.寸止めルール

 

組手競技の際、直説相手に攻撃を当てないで勝敗を決します。

技のタイミングや力強さを観点に、「もしも、攻撃が相手に当たっていたならば、ダメージを与えられるか」が大きな採点基準です。

安全性をある程度確保できること。

攻防の特徴が「離れた場所から一気に間合いを詰め、技を仕掛ける」という首里手の理想である「跳躍とスピードのある直線的な動き」を実現することができるルールです。

 

短所としては、

当てないことが前提のため、少しでも攻撃を早く相手に届けることが主となり、防御をせずに踏み込んでしまうため、大きな事故になる可能性が大きい

判定が、審判の判断に委ねられ、客観的な優劣の判断が困難であること。

  

写真に移っているシーンでは、できるだけ急所に攻撃を届けるためか、技が極まる瞬間に、上体や腕の肘が完全に伸びきった形が多く見られ、これでは技が届いたとしても、大きな衝撃を与えることは難しいのではないだろうか。

  

  

  

2.直接打撃制

  

極真会館の創始者 大山倍達の提唱したルールです。

先に紹介した「寸止めルール」では本当の強さは判断できない。

「寸止めといっても、実際は急所10cmも手前であり、その10cmで攻撃をしのぎ反撃に転ずるのが武術である」と批判し、1969年に世界で初めての直説打撃制による「全日本空手道選手権大会」を開催しました。

最初の案では、禁じ手は極力減らし、素手による顔面攻撃も有効としていましたが、会場側から許可が下りなかったため、禁じ手に加え許可されたとの逸話もあります。

 

この大会が開催されるまでは「空手の技は一撃必殺である」といわれていました。

大会では死者が出るかもしれないと話題になりましたが、命に関わるほどの怪我はありませんでした。

極真会館での稽古は、普段から顔面、金的攻撃あり、投げ技有りの組手稽古を行っていたため、優勝した山崎照朝は「顔面攻撃と金的攻撃がないので、普段の組手よりも緊張しなかった」と後に語っています。

  

長所としては、ノックアウトシーンが多く、勝敗が明らか。

試合自体に迫力があり見ていておもしろい。という点が上げられます。

  

短所は、顔面攻撃と投げが無いため実戦性に欠点があります

大会初期の頃は、顔面攻撃が有る無しにかかわらず上段をしっかりガードして戦っていましたが、回を重ねるに従い、顔面攻撃は最初から考慮しない「ルールに合わせた」戦い方が増えていきました。つまり、胸と腹のたたき合いと蹴りの応酬です。

武道の理想からは大きく離れてきたしまいました。

  

大会の目的の一つ、「空手の実戦性を世に知らしめ、更なる技術向上を期待」したはずなのだが、この禁じ手の採用が、結果的には極真空手の弱体化に繋がってしまったといえるのではないだろうか。

人間の本性を見誤った一つの事例ですね。

人間は易きに流れる

  

  

   

3.防具付き

  

防具付き空手ルールは、直説打撃制ルールの亜種と言えます。

安全のため、防具を着用して、技は止めずに相手に当て、技の有効性や強度により勝敗を決します。その防具を、何処まで着装するかで戦い方も変わります。

 

初期に考案されたものは、剣道の防具に手を加えた程度のものでしたが、徐々に技術も上がり、素材も研究されてきました。

ただ、それでも残された問題点は、頭部や首への衝撃度です。

ボクシングでも度々取り沙汰される頭部の後遺症ですが、グローブよりも、頭部を覆う形の防具の方が衝撃が中に残りやすく危険性が高いというもの。

また、防具を着けた上に、手には拳サポーターやグローブを着用するため、空手特有の技が使えないという欠点もあります。

  

  

 

  

 

4.まとめ

  

大会ルールについて、大まかな説明をしました。

競技としてのルール問題は、空手に限らず、柔道や剣道でも大いに悩んだことだろうと思います。ただ、柔道、剣道については世界的に一本化されて、一般的にも浸透しているため、微調整はこれからもあるものの、歴史の浅い空手とは問題の意味が大きく違います。

  

空手界は残念ながら、組織的統一はいまだなされていません。段位についてもそれぞれの会派で認定している現状にあり、それぞれの団体が既にルールを策定し、大会を開いていることをみても空手界の統一は非常にむずかいといえます。

ルールの制定によって容易に空手スタイルが変わってきてしまうということ。

すでにルールに適した空手スタイルが確立してしまっている以上、空手界の統一は不可能と思われます。

 

初期の極真空手では、「空手の武道性」にこだわった結果、「寸止め制」を採用する伝統空手を批判しました。

そこで「直説打撃制」のルールを提案し、空手の実戦性の向上を促し、格闘技の中で一番強い空手を目指しました。

しかし、どのようなルールを作ろうと競技大会においての目的は、勝ち上がることのみ。

勝ち方、戦い方にこだわれば目的を達成できないため、選手は主催者側の期待とは裏腹にルールを味方に付けた戦い方に行き着きます。

結果、大会結果とは関係なく、実戦性は衰えるばかりでした。

  

大会でどのようなルールを定めようとも、スポーツである以上、選手はルールと仲良くなります。

大切なのは、大会を空手修行の最終地点にするのではなく、普段の道場での稽古では、その会派の「武の理論」をしっかり学び、空手家としての成長に重きを置くこと。これに尽きるのではないだろうか。  

  

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