空手には、その会派の考え方の相違で、組手大会には様々なルールがあります。
そのルールは大きく分けて3種類あります。
空手における大会ルールはとても重要です。同じルーツを持つ空手が、大会ルールの違いで、全く別の競技になっているのが現状で、大会はもちろんのこと稽古さえ一緒に行うことができません。
どの流派であっても「安全性の考慮」、そして「空手本来の技術を発揮できる」ことを念頭にルール策定に試行錯誤しています。
それでも完璧なルールは難しく、長所と短所はどのルールにもあります。
そのような点も含め、大会ルールを大別して初心者にわかりやすく解説します。

寸止めルール
【採用団体】
日本空手協会(JKA)、全日本空手道連盟(JKF)を中心とする伝統派空手団体
【ルール制定の経緯】
1950年代、大学空手部を中心に「交換稽古」と呼ばれる自由組手が行われていましたが、負傷者が多く、安全性が大きな課題でした。
そこで、技を当てずに制御する方法が研究され、「当てないで技を競う」という寸止め方式の理念が共有され、徐々にルールが整備され、安全性と技術性を両立する競技形式として普及しました。
【長所と短所】
試合の安全性を高め、一般の人たちが気軽にスポーツとして空手道を楽しめることが大きな長所です。
攻防の特徴が「離れた場所から一気に間合いを詰め、技を仕掛ける」という首里手の理想である「跳躍とスピードのある直線的な動き」を実現することができるルールともいえます。
短所としては、当てないことが前提のため、少しでも早く攻撃を相手に届けることが主となり、防御をせずに踏み込んでしまうため、大きな事故になる可能性が大きいルールです。
さらには、相手を倒すための実戦なら連打や技の連係が重要になるところが、単発で終わってしまうところも短所と言えるのではないだろうか。
写真に移っているシーンでは、できるだけ急所に攻撃を届けるためか、技が極まる瞬間に、上体や腕の肘が完全に伸びきっており、これでは技が届いたとしても、大きな衝撃を与えることは難しいのではないだろうか。

直説打撃制
【採用団体】
極真会館はじめ、その分派(新極真会、極真館、士道館、正道会館)など
【ルールの制定の経緯】
日本拳法空手道の創始者山田辰雄や極真会館の創始者大山倍達らによって研究、提唱されました。
先に紹介した「寸止めルール」では本当の強さは判断できない。「寸止めといっても、実際は急所10cmも手前であり、その10cmで攻撃をしのぎ反撃に転ずるのが武術である」と批判し、1969年に世界で初めての直説打撃制による「全日本空手道選手権大会」が極真会館主催で開かれました。
最初の案では、禁じ手は極力減らし、素手による顔面攻撃も有効としていましたが、会場側から許可が下りなかったため、禁じ手に加え許可されたとの逸話もあります。
この大会が開催されるまでは「空手の技は一撃必殺である」といわれていました。
大会では死者が出るかもしれないと話題になりましたが、命に関わるほどの怪我はありませんでした。
当時の極真会館での稽古は、顔面、金的攻撃あり、投げ技有りの組手稽古を行っていたため、優勝した山崎照朝は「顔面攻撃と金的攻撃がないので、普段の組手よりも緊張しなかった」と後に語っています。
【長所と短所】
顔面への突き技、金的攻撃以外の攻撃は有効とされるため、ほとんどの技を使用でき、選手の力量や勝敗がわかりやすいところが長所と言えます。
短所としては、顔面攻撃と投げが無いため実戦性に欠点があります。
大会初期の頃は、顔面攻撃が有る無しにかかわらず上段をしっかりガードして戦っていましたが、回を重ねるに従い、顔面攻撃は最初から考慮しない「ルールに合わせた」戦い方が増えていきました。つまり、胸と腹のたたき合いと蹴りの応酬です。
武道の理想からは大きく離れてきてしまいました。
大会の目的の一つ、「空手の実戦性を世に知らしめ、更なる技術向上を期待」したはずが、この禁じ手の採用が、結果的にはフルコン空手の弱体化に繋がってしまったといえるのではないだろうか。

防具付き直説打撃制
【採用団体】
日本防具空手道連盟、新日本空手道連盟、大道塾、フルコン空手のジュニア大会など
【ルールの制定の経緯】
防具付き空手ルールは、直説打撃制ルールの亜種と言えます。
安全のため防具を着用して、技は止めずに相手に当て、技の有効性や強度により勝敗を決します。その防具を、何処まで着装するかで戦い方も変わります。
【長所と短所】
初期に考案されたものは、剣道の防具に手を加えた程度のものでしたが、徐々に性能も上がり、素材も研究されてきました。
防具を着けることにより、安全性は増しましたが、防具を着けた上に、手には拳サポーターやグローブを着用するため、空手特有の技が使えないという欠点があります。
さらに問題点は、頭部や首への衝撃度です。
ボクシングでも度々取り沙汰される頭部の後遺症ですが、グローブよりも、頭部を覆う形の防具の方が衝撃が中に残りやすく危険性が高いという研究もあります。



まとめ
大会ルールについて、大まかな説明をしました。
競技としてのルール問題は、空手に限らず、柔道や剣道でも大いに悩んだことだろうと思います。ただ、柔道、剣道については世界的に一本化されて、一般的にも浸透しているため、微調整はこれからもあるものの、歴史の浅い空手とは問題の意味が大きく違います。
空手界は残念ながら、組織的統一はいまだなされていません。
それぞれの団体が既にルールを策定し、大会を開いていることをみても空手界の統一は非常にむずかいといえます。
ルールの制定によって容易に空手スタイルが変わってきています。
すでにルールに適した空手スタイルが確立してしまっている以上、空手界の統一は不可能かもしれません。
