「これが空手だよぅ…」
極真空手の創始者 大山倍達総裁は、時々このようなことを言いました。
40年ほど前のことになります。
全日本大会で極真本部道場の豊田という、あまり実績のない選手が格闘マシーンと異名を持つ、当時「極真三強」の一人といわれた、黒沢浩樹選手の強力な下段蹴りに対し、ピョンピョン飛び跳ね避けながら、黒沢選手のアゴに跳びヒザ蹴りをヒットさせダウンを取り、一本勝ちしたことがありました。
跳びヒザ蹴りをきめる豊田選手

あの当時の黒沢選手は、顔面攻撃に対する防御は苦手だったようで、このような跳びヒザ蹴りに対して、下段払いのような動作で受けようとしてしまったり、顔面への突きに倒れたりというシーンが目立ちました。
「顔面攻撃は反則」というルールに特化してしまった戦い方の悪い面が表れていたのでしょう。
そして、この跳びヒザ蹴りで勝利した豊田選手に対して、大山倍達総裁は「これが空手だよ」と評価していたことを思い出しました。
僕は生意気かもしれないのですが、これは空手というより「窮鼠猫を噛む」の典型的シーンに僕には見えました。
確かに豊田選手は、黒沢選手の下段蹴りに追い詰められてはいましたが、心は負けていなかった。反撃のチャンスを窺っていました。豊田選手の作戦勝ちともいえます。
勝負は結果が全てです。どんな不器用な勝利でも勝ちは勝ちです。
その意味では、勝負に勝った豊田選手は素晴らしいのだろう。
でも、あれが空手の理想である筈はありません。
あれから40年が経ち極真空手は変わりました。
あの頃と比べ、組手での突き蹴りのスピードは速くなっています。
ただ、突きの連打は「チョコチョコチョコチョコ…」と打ち、蹴りにあっては、妙な変則的蹴りを放つ試合が増えました。
これは、空手の「進化」であるのか、大会ルールに則して生じた「変異」なのかを指導者は見極めるべきであり、極真空手の大会だけで通用する技であるなら、それは長い時間をかけて、極真空手の実戦性を弱めることにつながるのではないだろうか。
空手の伝統的技術を、時代の流行で失伝することのないように、技術の習得と次代への伝承にあっては軽々には判断しないことが大切です。



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